契約の締結に関する改正:保証



⬛個人保証の要件が厳しくなります!

【(1-1) 保証人保護規定の拡充:保証契約は公正証書で作成】

【改正内容】

◆事業拡充(創業)等のための貸金債務に係る【個人保証契約】は、保証契約締結の前1ヶ月以内に、保証する意思が公正証書で確認されていなければ、保証は無効となります。

◆ただし、以下の者が保証人となる場合には、公正証書は不要です。

①債務者が法人の場合:理事・取締役又はこれに準じる者、法人議決権の過半数を有する者

②債務者が個人の場合:事業の共同経営者、借主の事業に現に従事する配偶者


★該当条文【改正465条の6】(要約版)

(公正証書の作成と保証の効力)

 経営者等(取締役、大株主等)以外の者が、事業資金を主債務として保証する場合、保証契約締結日前1ヶ月以内に、保証人本人が公証役場に出向き、公正証書の作成により、保証人の保証する意思を明確にしなければならない。


【徒然やまとコラム】

★この改正により、個人保証契約における保証人の確保が難しくなる可能性があります。債務者(代表者)の親(元代表者)や子(次の代表者予定)であっても、役員でなければ公正証書が必要となります。なお、公正証書の作成は、2020年3月1日から可能です。

※保証意思確認の手続きの手数料(公証役場)は、1通11,000円を予定しているようです。


【(1-2) 保証人保護規定の拡充:契約締結時の情報の提供義務】

【改正内容】

◆ 主債務者は、事業に関連して個人保証を保証人に委託する場合は、①財産及び収支の状況、②他の債務の有無並びにその額と履行状況(返済しているか等)、③担保提供の内容等について、保証人に情報提供が義務となります。


★該当条文【改正465条10】(要約版)

(契約締結時の情報の提供義務)

   事業に関連して保証人に保証を頼む場合、主債務者はその財産や収支状況等の情報を提供しなければならない。情報を開示しない場合、または事実と異なる情報提供がされて保証人が誤認した場合、また、債権者が主債務者による情報提供がされてない場合、または保証人が誤認していることを知っている、または知ることができた場合には、保証人は保証契約を取り消すことができる。

※ 保証する者が法人の場合には、この条文は適用されない。


【徒然やまとコラム】

★この改正により、保証人に保証を依頼する場合には、財産・収支状況等の情報提供をしないと、保証が取り消される場合があります。借入予定の金融機関(債権者)から「保証人への情報提供義務」について、書面による確認を求められることが想定されてます。

★2020年4月以降に契約に係る保証人を依頼する場合には、これらの情報提供を前提に依頼することとなります。

★公正証書となるため、強制執行許諾文言(債務者は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述した)との一文を加筆された場合は、強制執行が(裁判で勝訴得ることなく差押ができる)可能となる保証契約になってしまう危険があるので、特に注意を要します。



【(2) 個人の根保証契約における極度額の定め】

【改正内容】

◆ 根保証契約を個人が行う場合には、極度額を定めた契約書面を作成しなければ、保証の効果は生じません。無効となります。これは、貸金に対する保証に限られません。

根保証契約とは?

★既に発生している特定の債務ではなく、継続的な取引から将来発生する債務を包括的に担保する保証をいいます。

★根保証契約は、保証する限度額を定めていないと無効となります。


★該当条文【改正465条の2】(要約版)

(個人根保証契約の保証人の責任等)

  「根保証契約」であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償等の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。


【徒然やまとコラム】

★この改正により、賃貸借契約や売買契約を締結する場合には、特に、注意を要します。

★極度額の目安は、当該契約期間の有効期間や発生する債務(売掛金等)の予想額などを参酌して設定する必要があります。