当事務所には、遺言公正証書をお預かりしている高齢ご夫妻からの「死後の手続き」のご相談が増えております。
高齢者世代は、「これからの暮らし」と同じくらい「もしもの時の段取り」も現実的なテーマになります。
特に、施設入居の前後は手続きが増え、家族が遠方・疎遠だったり、子などの「頼れる人」がいないと、ご自身の「健康」と「死後の手続き」が大きな不安になりがちです。
健康に関する心配から「施設入居」の検討が始まり、施設入居後の数年後に訪れるであろう「死」について、親族への連絡・葬儀・納骨・残置物の整理/撤去/搬出処分・電気/ガス/水道料/NHK等の解約・介護施設の退去手続き・介護保険/後期高齢者医療の手続き・年金等未支給請求手続き・生命保険手続き・遺言執行に関する各手続きなど、短期間に集中的に処理する労力のかかる事案が多くあります。
配偶者・子がいない場合には、これらの「死後の手続き」を「頼める者がいない」高齢者が少なくありません。
国は2024年6月に、身元保証・日常生活支援・死後事務などを行う事業者向けに「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定し、契約が長期にわたることや前払い(預託金)が発生しやすいことを踏まえ、利用者保護の必要性を整理しています。
ガイドラインには、利用者が確認に使えるチェックリストも付されています。
1. 「死後事務委託(死後事務委任契約)」とは何か
死後事務委託とは、生前に“自分が亡くなった後に必要になる手続き”を、信頼できる人(受任者)へ契約でお願いしておく仕組みです。
法律用語は難しく聞こえますが、要するに「死後の段取りを、紙にして約束しておく」ものです。
判例でも、死後の事務を含む委任契約が成立した場合、当然に死亡で終了しない趣旨の合意を含むと解され得ることが紹介されています(民法653条との関係)。
2. できること/できないこと(ここが混同ポイント)
死後事務で扱うのは、主に“手続きと実務”です。たとえば次のような内容が中心になります。
居室の明渡し・原状回復
医療費・施設利用料などの精算、解約手続き
賃貸の解約・明け渡し、遺品整理・引取り
;一方で注意したいのが、「相続(遺産の分け方)」とは別物という点です。相続は遺言や相続手続きの領域で、死後事務は“亡くなった後に発生する事務”を確実に回すための設計、と捉えると混乱しません。
3. なぜ、今「葬儀トラブル対策」が重要なのか
葬儀は、時間がなく、気持ちも落ち着かない中で、決めざるを得ないことが多い分野です。
消費生活相談では「十分な説明がない」「質素を希望したのに高額の請求になった」といった相談が多く紹介されています。
国民生活センターが公表するデータでも、葬儀サービスの相談件数は2024年度に978件とされ、一定数の相談が継続しています。
また、広告表示を巡っては、消費者庁が景品表示法に基づく課徴金納付命令を出した事例も公表されています。全ての事業者がそうではないにせよ、「表示と実態のギャップ」が起き得る前提で、事前に確認ルールを持つことが実務的です。
4. 施設入居前後に“先に決めておく”チェックリスト
死後事務は、内容を細かく決めるほど、当日の判断負担が軽減します。最低限、次の事項は、書き出しておくことが必要です。
連絡先:家族/友人/施設/かかりつけ医/専門職
葬儀の希望:規模(火葬式・家族葬・直葬などの方向性)、宗教(宗派)、呼ぶ人
納骨:お墓、永代供養、散骨、献体などの希望
住まい:賃貸か持ち家か、鍵、(賃貸の場合)管理会社・大家の連絡先
お金:通帳・引落口座、クレジット、未払いの有無
デジタル:携帯電話・サブスク・SNSの解約方針
死後事務委託でトラブルを減らす核心は、次の3点を“書面で固定”することです。
具体的な支援内容(どこまで、何を、いつまで)
費用支払いのための預託金の扱い(精算方法、残金の扱い)
死後の報告先(相続人への報告方法)
国の整理でも、死後事務については契約書・重要事項説明書への明記、預託金と残金の扱い、相続人への報告などを含めて設計することが重要とされています。
「何から決めればいいか分からない」「家族に頼みにくい・頼む人がいない」「費用トラブルは避けたい」——この3つが揃ったとき、死後事務は“善意”ではなく“契約と段取り”で守るのが現実的です。
やまと行政書士法務事務所(死後事務委託サービス)では、葬儀・納骨・遺品整理まで状況整理から、死後事務委任契約の設計、預託金・精算ルールの明確化、関係者への連絡網の整備まで、抜け漏れが出やすい部分を一緒に整えます。
施設入居前後のタイミングで棚卸しておくことで、急な局面でも慌てずに意思を反映しやすくなります。
なお、具体的な契約や手続きは、家族状況・資産状況・施設の規定・医療機関・介護認定等によりサービス内容が変わるため、個別にご相談ください。
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