卸売市場法の改正

NEW!(H30.6.20)

【卸売市場法の改正】

(審議経過)

<議案提出者:内閣(農林水産省)提出>

・議案名:卸売市場法及び食品流通改善促進法の一部を改正する法律案

・衆議院議案受理年月日:H30.3.6

・衆議院可決:H30.5.25

・参議院可決:H30.6.15

・公布:H30.6.22(法律番号62)

・施行:2020年6月


【卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案の審議】

  改正のポイントは、これまで(1971制定の「卸売市場法」)公設に限定してきた「認可制」の卸売市場を廃止し、一定の要件を満たせば、民間でも開設を認める「認定制」を導入するものです。公布から2年以内の施行です。

   改正の中で注目は、現行の卸売業者の販売先を仲卸業者に限定している「第三者販売」を原則禁止から仲卸業者以外(第3者)への販売も可能とする「各市場の選択制」にするなど、取引ルールの自由化を盛り込んでいます。

   政府(農林水産省)は、秋までには改正法の省令や「基本方針」を示すとしています。省令には、中央卸売市場の認定要件として、規模要件・資金の確保など適正な運営を担保できる諸条件を定めるとしてます。

   審議の過程では、民間企業が開設者となった場合、民間企業に有利な取引が行われる事態となって、市場の公正な価格形成などの公平性が崩れる懸念について、質疑が集中したところです。

   議論の結果、付帯決議では、卸売市場への国の指導・監督などの関与を適切に実施する旨が付されたところです。



改正法案は、参議院可決(H30.5.25)・衆議院可決(H30.6.15)、公布(H30.6.22)しました。



【卸売市場法改正に至る状況】


   卸売市場は、1971年(昭和48年)に定められた卸売市場法に基づき、青果物・水産物・食肉・花きの生鮮品の取引場をいいます。現在、中央卸売市場が全国64市場(40都市)にあります。内訳は、青果49市場(37都市)、水産物35市場(30都市)、食肉10市場(10都市)、花き16市場(12都市)、その他6市場(5都市)にあります。

   卸売市場の役割は、生鮮食料品等の流通の基幹的なインフラとしての役割を果たしており、年々減少気味ではあるものの、青果の6割強、水産の5割強が卸売市場を経由して消費者に生鮮食料品が届いています。

    特に、課題は、近年、卸売市場数・卸売業者数は、中央卸売市場(農水大臣の認可)・地方卸売市場(都道府県知事の許可)ともに減少しており、また、取扱金額においても、卸売業者・仲卸売業者ともに、市場外流通の増加等により減少傾向・横ばいで推移しています。



   卸売市場では、売り手である卸売業者、買い手である仲卸業者(市場内に店舗を有する業者)や売買参加者(市場内に店舗を持たない業者)の取引を通じて、生鮮食料品の集荷・出荷、価格決定、代金決済が一元的に行われます。

   しかし、卸売市場を経由しない市場外流通が広まり、徐々に卸売市場の取引量・額ともに低下傾向となったことなどから、農水省は、生鮮品流通の合理化を促す観点から卸売市場法の規制を抜本的に見直す方針を固めて、2018年3月に同法の改正案(卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案)を国会に提出したところです。



【卸売市場法改正の主なポイント:法改正で民間活力の今後の拡大が注目されます!】


◆ 改正の主なポイントは、次のとおりです。


(1) 卸売市場の開設者が「認可制」から「認定制」に変更。卸売業者の許認可の見直し。

★ 現在、中央卸売市場の開設は農林水産大臣の認可制、地方卸売市場の開設は都道府県知事の許可制から、ともに、認定制に変更。

   認定の申請は、市場の開設者は、①施設の内容、②業務の運営体制、③市場内の卸売業者等を記載した申請書を農林水産大臣、又は、都道府県知事に提出し、認定を受ける仕組みとなる。

★ 認定制の導入に伴い、卸売業者が国・県から直接的に営業許可や指導・監督を受ける規定は削除され、国・県は開設者に対する認定や指導・監督を通じて、間接的に卸売業者が管理される形にへと移行される。

★ 中央卸売市場は、これまで都道府県、または人口20万人以上の市に限る規定が削除され、地方卸売市場と同様に、民間事業者による開設が可能となる。


(2) 中央卸売市場の取引ルールを開設者が現在よりも柔軟に定められる。

★ 卸売業者から仲卸業者・売買参加者以外の直接販売(第三者販売)の禁止➡各市場の選択制へ

★ 仲卸業者による卸売業者以外からの仕入(直荷引き(じかにびき))の禁止の見直し

★ 取引される商品の市場への搬入(商物一致)➡卸売市場ごとに設定可能に



【徒然やまとコラム】

 卸売市場法は、一般の消費者には馴染みが薄い法律です、豊洲市場の移転問題で、「市場って、なに?」と疑問を持たれた方も少なくなかったのではないでしょうか?

 

 卸売市場法(1971年成立)は、生鮮食料品の流通について、公平な分配機能を担うために作られた仕組みです。しかし、現在では、卸売市場を経由せず、生産者が大手量販店と直接委託出荷契約や消費者・小売店への直接販売の拡大に伴って、卸売市場の経由率は低下傾向にあり、また、各施設の老朽化が急速に進むなど、卸売市場を取り巻く環境は、厳しい状況にあります。

 

 加えて、高速道路網・トラック輸送網が整備され、インタ-ネットで情報共有できる現在に、都内だけでも11もある中央卸売市場は取扱量・額とも低下傾向にあり、統廃合が急務な状況でもあります。

 

 食品の流通コストとなる卸売手数料は2009年に自由化されましたが、水産物5.5%、野菜8.5%、果実7%などの手数料は変わっていないため、今回の改正で、市場間・卸売会社の手数料やサービスなどについても、民間活力の導入によって、公平な競争での緩和によって、消費者を利益を還元できたらと願うところです。

 

 現実的な問題として、大手量販店等主導のサプライチェーンの強化、生産者と実需者との直接取引の拡大、ネット販売等の販売手法の多様化などを背景に、市場外流通が拡大に増え続けている状況から、民間活力の導入によって、今後の卸売市場の効率化・活性化、多様化な活用方法が進むことを期待したいところです。