在留期間更新・永住許可の手数料の大幅値上げへ


値上げの背景と主要国との比較について、専門の取次行政書士が解説

 

日本で生活する外国人にとって、在留期間の更新・変更、永住許可の申請は、生活や仕事を継続するために欠かせない手続です。 

国は、2026年、これらの手続に関する手数料を大幅に見直す改正法を成立させました。

 

現在、公表されている政令案では、在留期間更新・在留資格変更の手数料は、許可される在留期間に応じて最大7万5,000円、永住許可は現在の1万円から20万円へ引き上げる内容となっています。

 

「なぜ、このタイミングで、これほど、大幅に値上げされるのか」

 

「海外の主要国と比べて、本当に安かったのか」

 

「家族で申請する場合は、いくら必要になるのか」

 

本ブログでは、制度改正の内容、国が説明する値上げの背景、主要な諸外国との比較、今後の注意点について、取次行政書士資格を有する立場から解説します。



1.現在の在留手続の手数料

 

2025年4月1日以降に受け付けられた申請については、現在、次の手数料が適用されています。

 

  手続        窓口申請    オンライン申請

在留資格変更許可

 6,000円    

5,500円

在留期間更新許可

 6,000円

5,500円

永住許可      

10,000円  

原則として窓口申請

 

これらは原則として、申請時ではなく、許可を受ける際に納付します。

 

なお、2025年の改定では、2025年3月31日までに受け付けられた申請については、許可が4月日以降となった場合でも、改定前の手数料が適用されました。つまり、2025年の改定は「許可日」ではなく「申請受付日」を基準とする経過措置でした。


22026年の改正法では何が変わったのか

 

在留手続の手数料に関する入管法(出入国管理及び難民認定法)改正が成立しました。

 

正式には、2026年5月29日(令和8年5月29日)、第221回特別国会において「出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されたところです(令和8年法律第32号)。

 

この改正法では、法律上の手数料の上限が次のように引き上げられています。

 

手続

改正前の法律上の上限 

改正後の上限

在留資格変更許可

1万円

10万円

在留期間更新許可

1万円

10万円

永住許可     

1万円

30万円

 

ただし、これは実際に徴収する金額そのものではなく、政令で定めることができる「上限額」です。

実際の金額については、2026年7月に公表された政令案において、次の内容が示されています。

 


3.政令案に示された新しい手数料

 

(1)在留資格変更・在留期間更新

 

政令案では、許可される在留期間が長いほど手数料が高くなる仕組みが導入されています。

 

許可される在留期間

窓口申請

 オンライン申請

3か月以下

10,000円

 10,000円

3か月超6か月以下

18,000円

 15,000円

6か月超1年未満

25,000円

 21,000円

1年

33,000円

 27,000円

1年超3年未満

48,000円

 42,000円

3年以上5年未満

64,000円

 56,000円

5年以上

75,000円

 65,000円

 

現在は、1年の在留期間でも5年の在留期間でも、窓口申請なら一律6,000円です。

 

政令案どおり施行された場合、5年の在留期間が許可された人の窓口手数料は、6,000円から7万5,000円となり、現在の12.5倍になります。一方、オンライン申請は窓口申請より3,000円から1万円低く設定されており、政府がオンライン申請への移行を促進しようとしていることが分かります。

   

(2) 永住許可

 

手続

現行  

  政令案

永住許可

10,000円

 200,000円

 

永住許可については、現在の1万円から20万円へ、20倍の引上げとなる案です。

永住許可は原則として申請人ごとの手続です。そのため、夫婦と子ども2人の4人家族が同時に永住許可を受ける場合、政令案どおりであれば、国に納付する手数料だけで、合計80万円となります。

 

これは行政書士報酬や証明書取得費用、翻訳費用などを含まない、出入国在留管理局への支払金額です。

 


4.新しい手数料はいつから適用されるのか

 

政府が公表している政令案では、施行日は2026年10月1日とされています。

 

ただし、2026年7月17日時点では、政令案及び減額対象者のガイドライン案について、8月2日までパブリックコメントが実施されています。したがって、金額や経過措置は最終確定前です。

 

特に重要なのは、次の点です。

 

2026年10月1日より前に申請し、10月1日以降に許可された場合、旧手数料と新手数料のどちらが適用されるのか。

2025年の値上げでは「申請受付日」を基準とする経過措置が設けられましたが、今回も同じ取扱いになるとは限りません。

 

永住許可申請は審査期間が長いため、この経過措置は申請者にとって非常に重要です。最終的には、公布される政令、附則及び出入国在留管理庁の案内を確認する必要があります。

 


5.なぜこれほど大幅に値上げされるのか

 

国は、今回の手数料額について、主に次の要素を考慮したと説明しています。

 

① 審査に必要な実費

 

在留資格変更・在留期間更新の審査については、人件費約6,300円、システムの開発・運用費や事務費約3,300円など、合計約1万円の実費が必要になると試算されています。

永住許可については、通常の更新・変更よりも審査に時間を要するため、審査実費を約2万円としています。

 

② 出入国・在留管理や外国人共生政策の費用

国は、手数料を単なる申請書の審査費用としてだけではなく、次のような行政サービスの費用を負担してもらう「応益負担」として位置付けています。

  • 出入国・在留管理行政
  • 在留管理システムの整備
  • 不法滞在対策
  • 難民・補完的保護対象者への支援
  • 外国人向け相談窓口や情報提供
  • 日本語や日本の制度・ルールを学ぶための施策
  • 外国人との秩序ある共生に関する施策

国資料では、関連費用を約572億円、中長期在留外国人1人当たり年間約2万円と試算しています。

 

③ 永住許可後に得られる長期的な利益

 

国は、永住許可を受けた後の平均在留期間が約13.5年であることから、永住者が長期間にわたって受ける利益を手数料に反映すると説明しています。

具体的には、次の事項です。

  • 永住許可審査の実費:約2万円
  • 永住許可後の長期的な応益負担:約18万円

 の合計20万円としています。

 

④ 主要諸外国の手数料

 

国は、米国、英国、カナダ、フランス、イタリア、ドイツ、韓国などの手数料も参考(事項「6」)にしています。

 

⑤ 将来の物価上昇への対応

 

法律上の上限を更新・変更10万円、永住30万円まで引き上げたのは、将来の物価上昇等に対応し、頻繁に法改正を行わなくても政令で見直せるようにする目的もあります。

 


6.主要な諸外国との比較

 

出入国在留管理庁は、2026年6月1日時点の外国制度について、関連費用を含めた比較資料を公表しています。

 

(1) 就労資格に関する滞在許可の例

 

就労系滞在許可に必要な費用の例

許可期間等

米国

110万円

3年

英国

74万5,000円

1年の例

カナダ

13万3,000円

制度により異なる

フランス

約5万8,000円

最長1年

イタリア

約2万9,000円

最長2

ドイツ

約1万6,000円

最長4年

韓国

1万1,000円

最長3年

日本・政令案

1年:2万7,000円3万3,000

申請方法による

日本・政令案

5年以上:6万5,000円7万5,000円

申請方法による

 

(2) 永住許可等の例

 

永住許可等に必要な費用の例

米国

10万2,000円41万円

英国

62万9,000円

カナダ

技能労働者等:約17万円

フランス

約4万2,000円

イタリア

約2万9,000円

ドイツ

熟練労働者:約2万4,000円

韓国

約2万2,000円

日本・政令案

20万円

 

英国では、2026年4月以降、永住に相当する「Indefinite Leave to Remain」の申請手数料が3,226ポンド(約698,500円) (2026.0717現在の為替レート)となっています。

 

また、カナダでは経済移民の永住申請について、処理手数料と永住権取得手数料を合わせて1,590カナダドル(約184,036円) (2026.0717現在の為替レート)です。

 


7.外国との比較では注意が必要

 

「英国は約63万円だから、日本の20万円は安い」と単純に判断することはできません。

国によって、次の点が大きく異なるからです。

 

(1) 申請者本人と雇用主の負担割合

 

米国や英国では、就労資格の取得に必要な費用の一部を雇用主が負担する制度があります。

国の関連資料に示された米国の約110万円も、原則として雇用主が負担する費用を含んでいます。本人が110万円を全額支払うという意味ではありません。

 

(2) 医療制度利用料などが含まれている場合がある

 

英国の就労資格に関する費用には、査証申請料だけでなく、公的医療制度を利用するための費用などが含まれる場合があります。

 

(3) 申請時に支払う国と許可時に支払う国がある

 

海外では、不許可となっても申請料が返還されない制度が一般的です。

これに対して、日本の現行制度では、在留資格変更、更新及び永住許可の手数料は、原則として許可時に納付します。

 

(4) 手続の内容や権利の範囲が異なる

 

永住資格で認められる権利、社会保障制度、更新制度、家族帯同の取扱いなどは国ごとに異なります。

 

したがって、金額だけを並べるのではなく、何の費用が含まれているのか、誰が負担するのか、どの程度の在留期間や権利が認められるのかを確認する必要があります。国の関連資料も、各国の金額は一例であり、申請内容や雇用主・申請人の状況によって異なると注意書きを付しています。

 


8.減額・免除制度も設けられる予定

 

改正法では、経済的困難その他の特別な理由がある場合に、手数料を減額又は免除できる制度が設けられています。

 

政令案では、主に次の人が対象として想定されています。

  • 外交又は公用に関係する一定の外国人
  • 難民認定又は補完的保護対象者の認定を受けた人
  • 生活保護法上の要保護者に準ずる程度に困窮している人
  • その他、人道上の配慮を必要とする人

減額できる上限は、3か月を超える在留期間の変更・更新については1万円、永住許可については2<万円とする案です。

 

したがって、一般の会社員やその家族について、収入が少ないという理由だけで広く減額される制度ではなく、対象は比較的限定される可能性があります。


9.行政書士として考える今回の改正のポイント

 

今回の改正には、審査や在留管理に必要な費用を受益者にも負担してもらうという考え方があります。

また、オンライン申請の手数料を低く設定することで、窓口混雑の緩和や行政手続のデジタル化を進めようとする方向性が読み取れます。

一方で、永住許可手数料が1万円から20万円となることは、一般家庭にとって非常に大きな負担です。

特に問題となり得るのは、次のようなケースです。

  • 夫婦と子どもが同時に永住申請する場合
  • 子どもの多い世帯
  • 留学生から就労資格に変更する場合
  • 1年更新が繰り返される場合
  • 会社が外国人従業員の更新手数料を負担する場合
  • 許可される在留期間が申請時には分からない場合

例えば、5年の在留期間を希望して申請しても、実際に何年が許可されるかは審査結果が出るまで確定しません。その結果によって納付する手数料が変わる仕組みとなるため、企業や本人にとって費用の予測が難しくなる点も課題です。

 


10.今後、申請者が注意すべきこと

 

在留期間更新については、手数料の値上げを避けるために、法定の受付期間より極端に早く申請することはできません。

一方、永住許可については、要件をすでに満たしている場合、制度施行前に申請するかどうかが大きな関心事となります。

しかし、単に「値上げ前に出せばよい」というものではありません。

 

永住許可では、次の事項が厳しく確認されます。

  • 在留年数
  • 現在の在留期間
  • 収入及び生活の安定性
  • 住民税の納付状況
  • 年金・健康保険料の納付状況
  • 素行状況
  • 家族関係
  • 日本国の利益に合するかどうか

準備不足のまま申請し、不許可となった場合には、再申請まで時間を要することがあります。

 

手数料の改定時期だけで判断せず、許可要件を満たしているかを確認したうえで、申請時期を検討することが重要です。


まとめ

今回の在留手続手数料の見直しは、単なる物価上昇に伴う数千円程度の値上げではありません。

政令案どおりであれば、

  • 在留期間更新・在留資格変更は許可期間別の料金になる
  • 5年以上の場合は窓口7万5,000円、オンライン6万5,000円になる
  • 1万円から20万円になる
  • オンライン申請が窓口申請より低く設定される
  • 一定の困窮者等には減額・免除制度が設けられる

という大幅な制度変更になります。

 

主要国と比較すると、日本の現在の手数料が低い水準にあることは事実です。

 

しかし、海外の金額には雇用主負担分、医療制度利用料、労働市場審査費用などが含まれる場合があり、日本の手数料と単純に比較することはできません。

 

特に、永住許可の手数料20万円は、家族単位では数十万円規模の負担となります。制度の実施に当たっては、経過措置、分割納付の可否、減額対象者の範囲、審査・相談体制の充実などについて、分かりやすい周知が求められます。

 



行政書士やまと総合法務事務所からのご案内

 

在留期間更新、在留資格変更及び永住許可申請では、申請書を作成するだけでなく、就労状況、収入、納税、年金・健康保険料の納付状況、家族関係などを総合的に確認する必要があります。

とりわけ永住許可については、申請時期の判断と提出資料の組立てが重要です。

 

当事務所では、現在の在留状況を確認したうえで、申請可能性の検討、必要書類の整理、理由書・説明書の作成、出入国在留管理局への申請取次まで、総合的に支援しています。

 

特に、永住許可申請については、今回の入管法改正成立後に、数件のご依頼を頂き、うち、1件は受理され、他の案件は、今月中に申請準備を進めています。

 

 行政書士やまと総合法務事務所は、永住許可をご希望の方々を全力でサポートしておりますので、お気軽に、ご相談ください。