AI×農業の最新トレンドとは?―「機械の自動化」から「経営判断を支えるAI」へ


農業分野では、現在、担い手不足や高齢化、資材価格の上昇、気候変動への対応が大きな課題となっています。

 

これら課題を解決する手段として注目されているのが、ドローン、衛星データ、各種センサー、各アプリなどを組み合わせた「スマート農業」です。

 

これまでのスマート農業は、農作業を機械で省力化することが中心でしたが、現在の「AI×農業」は、生育や収量の予測、病害虫の診断、食味診断、販売計画、環境負荷の算定、栽培技術の継承など、農業経営全体を支援する段階へ進んでいます。

 

今回は、2026年時点における農業の最新トレンドを解説します。



1.農業に特化した「生成AI」の開発

 

最も注目されている動きの一つが、農業分野に特化した生成AIです。

 

一般的な生成は、インターネット上の幅広い情報をもとに回答しますが、農業特化型生成は、農業試験場、研究機関、栽培マニュアル、過去の作業記録や農業気象など、農業に関する専門的なデータを学習します。

 

農林水産省と農研機構では、農業データ連携基盤「WAGRI」を通じて、農地、栽培、被害、収穫、経営、販売などを支援する農業特化型生成AIの開発・社会実装を進めています。

 

既に、農業者がスマートフォン等から、「葉の色が薄くなった原因は何か」、「今週の気象条件では、どの作業を優先すべきか」、「収量を増やすには、どの管理方法を見直すべきか」と質問すると、その地域・ほ場や品目に応じた回答を得られる仕組みが実現できているところです。


2.写真による病害虫・雑草のAI診断

 

スマートフォンで作物の葉や果実を撮影し、AIが病気、害虫、雑草などの可能性を判定する技術も実用化が進んでいます。

 

農業データ連携基盤「WAGRI」では、画像を送信することで、病害虫や雑草の診断結果を取得できるAPIが提供されており、具体的には、トマト、キュウリ、イチゴ、ナス、ブドウ、ピーマンなど、複数の作物に対応する画像診断機能が開発されています。

 

これにより、病害虫の早期発見や防除判断の迅速化が期待できます。

 

利用にあたっては、写真だけでは判断できない症状もあり、AI診断の結果だけで農薬を選定することは適切ではありませんので、登録農薬、使用時期、希釈倍率、使用回数などを確認し、必要に応じて関係機関等(普及指導センターや専門家)に相談する必要があります。

 


3.生育・収量・収穫時期の予測

 

AIは、気温、降水量、日射量、土壌、施肥、過去の収量、作業履歴、病害虫等の被害履歴などのデータを分析し、作物の生育状況や収穫時期、収量を予測します。

 

現在は、キャベツ、レタス、白菜、ほうれん草などの露地野菜について生育・収量を予測するモデルや、キュウリ、ピーマン、ナスなどの施設環境を制御するモデル、小麦の収量低下要因を分析するモデルなどの開発が進められています。

 

予測精度が高まれば、次のような経営改善が期待できます。

(1) 収穫作業員の配置を早めに決める
(2) 出荷量を予測して販売先と調整する
(3) 適期収穫によって品質を安定させる
(4) 肥料、水、農薬の過剰使用を抑える
(5) 加工・流通事業者との契約数量を調整する 

 

AIは、単に農作業を楽にするだけでなく、販売や資金繰りを含む農業経営の予測にも活用され始めています。

 


4AI搭載ロボットによる自動収穫・除草・運搬

 

既に、先進地域では、ロボットトラクター、自動収穫機、自律走行型除草機、運搬ロボット、農薬散布ドローンなどの導入が着々と進んでいます。

 

最近の重要な考え方は、従来の農地や栽培方法に機械を無理に合わせるのではなく、ロボットが作業しやすいように、樹形、畝、品種、作業工程などの生産方式自体を見直すことです。

 

農林水産省では、果樹・茶作の収穫や運搬、除草、防除など、省力化の必要性が高い分野を重点開発対象とし、2030年度までに新たな技術体系を構築する目標を示しています。

 

今後のスマート農業は「高性能な機械を購入するだけ」ではなく、機械の能力を発揮できる生産体制へ転換することが重要になります。

 


5.GPS・ドローン・AIによる農地の「見える化」

 

既に、先進的な現場では、GPSデータやドローンで撮影した画像をで分析し、農地や作物の状態を把握する技術も広がっています。

 

この画像データを活用することで、 

 (1) 作物の生育むら
 (2) 水不足や排水不良
 (3) 病害虫の発生が疑われる場所
 (4) 雑草の繁茂状況
 (5) 耕作されていない農地
 (6) 肥料を重点的に投入すべき場所

 

などを地図上に表示できます。

 

農地(ほ場)を一律に管理するのではなく、必要な場所に必要な量だけ肥料や農薬を使用する「可変施肥・可変農薬散布」につなげることで、資材費の削減と環境負荷の低減が期待されます。

 

農林水産省も、AIとGPSデータを組み合わせた農地(ほ場)の把握・管理を、自治体や農業現場で活用する取組を紹介しています。

 


6.環境負荷とCO₂排出量の自動算定

 

今後は、農産物の価格や品質だけでなく、「どの程度環境に配慮して生産されたか」が取引条件の一つになる可能性があります。

 

農業データ連携基盤「WAGRI」では、営農管理アプリに登録された栽培データを利用し、温室効果ガスの排出・吸収量を算定する仕組みが開発されています。既に、20256月からは、農林水産省の環境負荷低減の「見える化」と連携するAPIが提供されています。

 

将来的には、農業者が入力した肥料、農薬、燃料、収量などのデータから、環境負荷を自動的に計算し、小売店、食品メーカー、消費者に示す仕組みが一般化すると考えられます。

 

AI利用やデータの活用は、省力化だけでなく、農産物の付加価値向上や新たな企業との取引拡大にも波及効果は確実です。

 


7.スマート農業機械は、「所有」から「利用」へ

 

高性能なスマート農機は、導入費用が高額になりやすく、特に中小規模の農業者にとって大きな負担になります。

 

そこで広がっているのが、農業支援サービス事業者による、

(1) ドローン防除の作業受託

(2) ロボットトラクターによる耕起

(3) 自動収穫機の共同利用

(4) スマート農機のレンタル・リース

(5) オペレーター付き作業サービス

(6) 農業データの分析サービス

などです。

 

農林水産省では、農業者がスマート農機を自ら所有するだけでなく、サービスとして利用することで導入コストを抑える方向を推進しています。2026年には、農業支援サービスへの新規参入者向けに、事業設計、収支計画、リスク対応、法制度などを整理したスタートアップガイドも公表されています。

 


8.スマート農業技術活用促進法による支援

 

2024年10月1日には「スマート農業技術活用促進法」が施行さ、農業者等が作成する「生産方式革新実施計画」と、技術開発・供給事業者が作成する「開発供給実施計画」の認定制度を利用して、農業者と農業支援サービス事業者が連携して、スマート農業機械の導入が各地で進んでいます。

 

認定を受けた農業者や事業者は、一定の要件のもとで、金融、税制、行政手続などの支援措置を受けられ、スマート農機を導入する際は、単に補助金を探すだけでなく、

 

(1) 経営上の課題

(2) 導入する技術

(3) 生産方式の変更内容

(4) 省力化・生産性向上の目標

(5) 導入後の収支計画

 

を整理した事業計画を作成することが重要となります。

 


 

 9. AI農業者に代わるものではなく、判断を支えるツール

  

AI×農業の最新トレンドは、単なる農作業の機械化や自動化ではありません。

 

AIによる栽培相談、GPSデータに基づく画像による病害虫診断・生育・収量予測、ロボットによる各作業、GPS衛星による農地管理、環境負荷の算定などを組み合わせ、農業者の判断と経営を支える方向へ進化しています。

 

一方で、高額な設備を導入しても、ほ場の耕種条件、品目、経営規模等に適していなければ、十分な効果は得られません。

 

まずは経営上の課題を明確にし、購入(補助金等の利用)、共同利用、リース、作業委託などを比較したうえで、無理のない導入計画を立てることが大切です。

 

行政書士やまと総合法務事務所では、農業法人の設立・組織変更、農業継承、各種農地手続、スマート農業設備の導入計画、補助金申請、資金・融資を含む事業計画の作成など、農業経営に関する各種支援を行っています。

 

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