事業承継の準備はできてますか?~中小企業白書から~



 先月(H31.4.26)に、2019年版「中小企業白書」「小規模企業白書」が公表されました。この白書の概要では、中小企業(358万者:小規模事業者305万者、中規模企業53万者)は、総じて改善傾向であるとしながらも、人手不足の深刻化、労働生産性の伸び悩みなど、中小企業の懸念点も浮き彫りとなる年と分析してます。

 

 業種別にみると、小売業は落ち込んでいるものの、製造業・建設業・卸売業・サービス業の売上高・経常利益ともに、2017年より増加してますが、設備投資は横ばいで推移、また、倒産件数は減少傾向が続いているものの、経営者の高齢化や後継者不足を背景に休廃業・解散企業が年々増加傾向となっています。


 この中に、「令和」に入って、経済・社会構造の変化に対応して、中小企業・小規模事業者の取り組むべき課題がみえてきます。中小企業等の経営者の高齢化が進む中、休廃業・企業解散件数は年々増加傾向にあり、中小企業・小規模事業者数は年々減少しており、中小企業等が培った技術・ノウハウや設備など、貴重な経営資源が次世代に「事業継承」されずに失われるケースも少なくありません。

 

 事業承継には、①親族内承継、②親族以外の役員等、③社外への承継(M&A等)がありますが、十分な準備期間を設けて、円滑な経営資源の移行が必要となります。特に、親族内承継では、相続税・贈与税の負担が大きく、この課題に対応するために、2018年度に法人版の事業承継税制の特例措置が創設され、2019年度には個人版の事業承継税制の特例措置が創設され、これらを利用することが安定した事業承継に繋がります。 


 円滑な事業承継を実現するために、活用できる事業承継税制支援について、概要をご紹介します。

【法人版事業承継税制】

 後継者が先代経営者から贈与・相続により取得した非上場株式等に課される贈与税・相続税について、納税を猶予及び免税する措置です。2018年4月1日からの10年間限定の特例措置が創設され、従来の措置より一段と拡充されました。主な内容は、次のとおりです。

 ① 対象株式数の上限を撤廃し、猶予割合を100%に拡大。

 ② 雇用要件を抜本的に見直し、5年平均8割の雇用維持が未達成でも猶予が継続可能。

 ③ 対象者を拡大し、複数の株主から最大3名の後継者に対する承継も対象。

 ④ 経営環境の変化に対応した減免制度の導入

 上記の特例措置を活用するためには、2018年4月1日からの5年以内に都道府県知事に「特例承認計画」を提出した上で、2027年12月31日までの10年間に実際に株式等を後継者に承継することが必要です。


【個人版事業承継税制】

 2019年4月1日から、個人事業者が事業用資産を後継者に贈与・相続した際に課される贈与税・相続税の納税を猶予及び免税する措置が創設されてます。法人版事業承継税制の特例と同様に、2019年4月1日からの10年間限定の特例措置であり、土地・建物・機械・器具備品等の幅広い事業用資産を対象に、100%納税猶予を受けることができます。

 この制度の適用を受けるためには、2019年4月1日からの5年以内に都道府県知事に「個人事業承認計画」を提出した上で、2019年1月1日から2028年12月31日までに事業用資産を後継者に承継することが必要です。

 なお、個人版事業承継税制は、事業用小規模宅地特例との選択性となってますので、どちらのメリットが大きいか、シュミレーション等を行っての検討が必要となります。


【事業承継補助金】

 事業承継を契機に新たな分野へのチャレンジや事業転換等に取り組み、一層の成長を目指す中小企業者を支援するために、設備投資・販路拡大等に必要な経費を補助する助成金です。昨年度から予算幅も大きくなり、親族内での承継による経営者交代(補助上限:最大500万円)、M&Aによる事業再編・統合(補助上限:最大1200万円)など、多様な事業承継が対象となりますので、活用について、ご検討が必要です。


徒然のひとこと

 

 令和がスタートした2019年5月は、4月施行の「働き方改革」や「新たな外国人材受入れ」など、日本全体が落ち着いていない状況のような気がします。

 今、取り組まなければならないことを見据えて、適確な行動が求められます。事業承継は、10年先を見据えて、今から準備と対応が必要となります。

 当事務所では、製造業(農業経営含む)等を中心に、円滑な事業承継に向けたプログラムのご提供など、伴走型のサポートをしてますので、お問い合わせください。