待機児童は、なぜ、減らないの?

   現在、都内の認可保育所では、2次申込も終わって、H30年4月に入園できる子どもが決まった時期です。

 

報道によると、東京都の一部の区(台東区・港区等)では、4月の保育所入所の申込者数は、前年比2桁の伸びを記録したそうです。

 

各自治体では、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」を増やしたり、預かる時間を延ばしたり、また、H27年からは、少人数を預かる小規模保育なども新たに認可対象とするなど、受皿の拡大として、利用できる施設・児童数を増やしておりますが、増加する需要に追いつかないのが実態です。

 

東京都市部全体では、待機児童解消に向けた追加対策を講ずるなど、取り組みを強化してますが、待機児童ゼロは、遠のく状況が続いてます。

 

H29.4.1時点、全国の「待機児童」は26,081人(前年比2,528人増加)、東京都では、「待機児童」8,586人(同:120人増加)してます。とりわけ、1・2歳児(全国:72%、都:69%)の増加が際立ってます。

 

(※待機児童数は、認可外保育施設にも入れない児童の数です。)


★待機児童は、なぜ、解消できないのでしょうか?★

主な要因・課題は、次のとおりです。

 

(1)女性(子育て世代)の就業増加、(2)都市部の子育て世代の人口増加、(3)核家族化の一層の進展、(4)認可保育所施設の増加が進まない現状、(5)保育士の確保・処遇改善が進まない現状(★保育士の減少)。

 

この5つの要因が相まって、東京の都市部では、各自治体が有効な対策をとっているものの、待機児童が減らない、反対に増加するなど、一層、問題が深刻化しています。

 

  (1)の子育て世代の女性の就業増加について、25歳~44歳の結婚している女性の就業率は、全国平均72%(H27)、東京都では75%を超えてます。

 

男性の年功序列型賃金制度の崩壊・収入の低下、非正規雇用の増加等によって、生活確保のために、育児と仕事を両立する「共働き」を選択せざる得ない女性(世帯)が増え続けてます。

 

 特に、育児休業を終えて職場に復帰する母親が多い「1歳児」は、保育所に入れたい、入所希望者が増加し続け、都市部では、その受入施設の整備が追いつかず、入れない状況が続いています。

 


では、どうしたら待機児童は、減らすことができるのでしょうか?

上記の(1)と(2)と(3)の課題は、今後、増加は緩やかになっても、減少は見込まれない状況です。

 

(4)と(5)は、認可保育施設の基準の見直しや、無認可保育施設の活用推進、保育士の労働環境改善、待遇の是正など、対策の必要性は、喫緊の課題とされてますが、現実には、乗り切れない、いくつものハードルがあり、容易には、解決できない厳しい状況です。

 

   こうした状況の中、国・自治体の取組に加えて、企業の協力も、待機児童問題の解決に必要な状況です。企業内保育園の建設や在宅勤務の増加、フレックスタイムでの勤務を可能にするなど柔軟な対策をとることが求められてます。

 

今、「待機児童解消に向けた対策」の一つとして、「企業主導型保育事業」(内閣府)による整備が注目されてます。

 

この事業を用いて、H29年4月で、都内に69施設が認定されてます。H29年度には、企業主導型保育事業で全国7万人の整備、H30年度には、新たに2万人分を整備することが発表されてます。

当事務所では、本事業および企業主導型保育施設設置促進助成金(東京都)について、事業内容等のご説明・申請のご支援をしております。

ご関心の方は、お気軽に、お問合わせください。


徒然のひとこと

   東京都下の区・市(一部)の認可保育所では、運営費が増大した理由により、2018年4月から保育料の値上げ(3~11%:収入に応じて値上げ)が発表されてます。

 

 一方、報道によれば、認可保育所の3~5歳の「原則無償化」の検討がされてます。

 

2019年度には、先行実施として、「5歳児の無償化」が閣議決定されてますが、そもそも、認可保育所に入れない子どもが多くいる中、施策の優先度は、どうなのでしょうか?

 

 東京都等の都市部において、育児休業が終了し職場復帰するために、1歳の子どもを預けられる施設とその環境、かつ、保育料の負担軽減を求めている子育て世代の最優先の要望は、届いているのでしょうか。