「住みやすい・暮らしやすい、街づくり」とは?


私が居住している区域では、新たな住宅がいくつも建築中ですが、建ぺい率・容積率の用途制限一杯で、前の住宅より、敷地が狭く、かつ、戸数が多く、建てられてます。

一方で、「木造密集市街地」の解消として、「密集住宅市街地整備促進事業」を活用して「まちづくり・地域づくり」を進めてる区域も近くにあります。

「なぜ、もっと、空間を活かした居住環境を創らないのでしょうか?」

少し専門的になりますが、次の経緯など、難しい課題がありましたので、ご紹介します。


私が建築設計に携わっていた頃、建築基準法第6条第1項の規定による「建築確認申請手続」において、都市計画法上の区域指定「市街化区域」の「用途地域:第1種中高層住宅専用地域、その他の指定:土地区画整理予定区域」である事案で「土地区画整理事業を施行すべき区域」(以下「すべき区域」という)について、その存在を知ったところです。「すべき区域」とは、何なのか? 皆さん、ご存知でしょうか?


まず、「土地区画整理事業」とは、どんな事業なのでしょうか?

「土地区画整理事業」とは、都市計画区域内の土地において、道路・公園・広場・河川などの公共施設と宅地を総合的・一体的に整備して、区画を整える事業をいい、戦前・戦後を通じて、全国の都道府県において実施されてきた事業です。

その中で、「土地区画整理事業をすべき区域」とは、どのような経緯で決まられたのでしょうか?

ここでは、「すべき区域」が東京都23区に多くみられるため、東京都の経緯等をご紹介します。


東京緑地計画(S14)
東京緑地計画(S14)

【経緯】「土地区画整理事業を施行すべき区域」の指定の成り立ちは、区域の大部分が「東京緑地計画」(1939年(S14))の「環状緑地地帯」に位置付け(都心から10~20km圏、市街地の拡大膨張抑制のため建坪率10%)られたところに端を発します。

 

さらに、戦災都市の復興計画を目標とした「特別都市計画法」の制定(S23)により、東京区部の周辺部に指定された「緑地地域」に区域の大部分が指定されたことに起因しております。


緑地地域は、郊外部に自然環境と生産農地の保全を目的とする地域を確保するとともに、区部における市街地が際限なく連担して膨張することを防止しようとしたものです。


しかし、人口の増加や宅地需要の増大に対処し、スプロール防止を図るため、制度そのものを検討する必要が生じ、計画的な市街地整備の必要性のもとに、都市計画法(新法)(1969年(S44))が制定され、東京23区全域が市街化区域に指定される中で、昭和44年に「緑地地域全域が指定解除」され、同時に新法により「土地区画整理事業を施行すべき区域」として都市計画決定されたところです。

 

東京23区のうち、「東京都下の市に隣接している区」及び「千葉県・埼玉県・神奈川県」に隣接している区である「大田区・世田谷区・中野区・杉並区・板橋区・練馬区・足立区・葛飾区・江戸川区」の9区(東京都周辺区部9区)の一部区域が都市計画指定(総面積:8,970ha)されたところです。

 

総面積8,970haのうち未整備が4,670ha(未整備率52%)(2013年4月)となってますが、この未整備の広さが、「どのくらいの広さか」わかりますか?

 

実は、1ha=0.01K㎡ですから、46.7k㎡となります。

東京23区うち、「すべき区域」に該当しない区の面積と比較すると、渋谷区15.11k㎡、目黒区14.70k㎡、新宿区18.23k㎡ですので、3区を合計すると48.04k㎡ですので、およその面積がイメージできますね。

 

東京ドーム(0.47k㎡)と比較すると、なんと東京ドーム約100個分の広大な面積が未整備の「すべき区域」に相当する面積です。

未整備の面積の広さに、驚き!!ですね!


「土地区画整理事業を施行すべき区域」は、土地区画整理事業を進めることで、道路や公園等の都市基盤の整備を推進していく地域です。

 

しかし、都市計画決定以後40年以上が経過している現在において、土地区画整理事業が実施(施行中を含む)された地区は、全体の約48%にとどまっており、現在も多くの未施行区域(未整備)が残存しております。

 

昨今の社会経済等の状況から、特殊な場合を除き、今後土地区画整理事業を積極的に進めていくことが極めて難しい状況にあるため、新たな市街地整備手法の検討が必要になっています。


このため、当該の区では、「すべき区域」の街づくりについて、土地区画整理事業に限定せず、「地区計画」(修復型の街づくり)等の多様な手法を活用し、街づくりを進めているところです。


しかしながら、現実的な問題として、「すべき区域」は、事業化の予定がなくても、「都市計画法53条の建築規制区域」となります

これは、将来の事業の円滑な施行を確保するために、建物の階数や構造に関する建築制限を行うものです。

 

具体的には、「すべき区域」内で建築物を建築する場合、都市計画法第53条第1項の規定に基づく許可(東京都)が必要で、都市計画法第54条の下記の許可基準をクリアすることが条件となってます。

(※ 区によっては、事前調査等によりこの制限を緩和できる場合もあります)

 

次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却できると認められる建築物。①階数が2(※制限緩和で階数3(一部の区では取扱が異なる))、高さが10m以下であり、かつ地階を有しないこと(半地下も不可)。②主要構造部が、木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。(鉄筋C造は不可)

 

このことは、「すべき区域」の土地所有者等にとっては、建築制限という土地利用規制が求められており、土地の自由度・有効活用が図られない面や、より高層な建築物が建てられないことによる収益の低下や、それに伴って地価低下・低迷などの課題も顕在化しているところです。

 

加えて、その区域に居住する区民も、「幹線道路の不足・生活道路の不足」や「敷地の未接道・敷地の不整形・敷地の細分化」等による生活空間の不便さが生じており、生活面における課題もあるところです。

 

また、老朽化住宅が取り壊され、大きく整地されたのにもかかわらず、以前よりもさらに狭い敷地に細分化(例:敷地面積の最低限度規制70㎡(※用途地域・建ぺい率等により規制敷地面積が区で異なります))され、再び、脆弱な木造住宅が建築され、新たな「木造建築物の密集化」を生じる要因となってる区域もある状況です。

 

土地の有効利用については、行政上・土地利用上・整備上や住民の合意など様々な諸課題があり、難しいところでありますが、これからの「まちづくり」を進めるには、「暮らしやすい生活空間のある【まちづくり】」が実現できればと思う日々です。


【徒然のひとこと】

このように、東京23区内の未整備区域では、「すべき区域」の今後の整備手法(指定の廃止・除外・変更も含めて)について、住民にとっての「住みやすい・暮らしやすい・まちづくり」を創るために、行政・地権者・住民など関係者が諸課題に向き合って検討し、市街地整備を推進することが求められている状況です。