森林経営管理法について


平成30年5月25日、新たな法律である「森林経営管理法」が可決され、成立しました。

この法律は、平成31年4月1日に施行され、「新たな森林管理システム」がスタートします。



【森林経営管理法案】の概要

(審議経過)

<議案提出者:内閣(農林水産省)提出>

・衆議院議案受理年月日:H30.3.6

・衆議院可決:H30.4.19

・参議院議案受理月日:H30.4.19

・参議院 審議開始:H30.5.16

・参議院可決・成立:H30.5.25

・公布年月日:H30.6.1

・法律番号:35

・施行:H31年4月



 「森林経営管理法」は、森林所有者が管理できない(放置している)森林を市町村や民間業者(担い手)が代わって管理する「新たな森林管理制度を創設するものです。

  この制度の財源は、私たち国民に新たな負担となる「森林環境税」の導入が前提となります。


【森林の現状】

★ 森林所有者は、9割以上が10ha以下の零細経営であり、その25%以上が地元不在者です。伐採適期(樹齢50~60年)を迎えた人工林は、5割近くありますが、間伐できずに、放置・荒廃が進む森林も多くあります。


【森林経営管理法のポイント】

 新たな森林管理制度では、森林所有者が経営管理できない森林については、市町村が経営管理の委託を受け、意欲と能力のある林業経営者に再委託し、再委託できない森林は市町村が経営管理を行うとする内容です。(採算管理が難しい森林は、市町村が自ら管理する)


★要約すれば、森林所有者が管理できない森林については、市町村が「経営管理権」を設定し、さらに「経営管理実施権」を設定した業者に委託するものです。

★当法案の概要からみると、森林所有者の中には、住居も都市部に移り、相続で世代交代が進めば、結果として、森林が荒廃し、森林の環境保護や災害の防止、道路の建設等の阻害要因となります。

  このため、森林所有者の責務を明確にして、伐採などの責務が果たせない場合には、市町村や民間事業者にが代わって管理できる仕組みを創設するものです。

 具体的には、50年を上限とする経営管理権経営管理実施権の2つの新しい権限を創設して、森林所有者に代わって、市町村が森林を整備(伐採した木材の販売も可)する仕組みです。


★ 法案では、農地の賃借権の場合は、栽培した作物は借地者の所有物となりますが、森林の場合は、立木は森林所有者のものであり、所有者以外は処分(伐採・販売等)できないため、森林所有者が経営管理を行わない場合に、林業経営者(民間事業者)が、森林所有者の所有する立木の伐採・販売・造林・下刈・間伐等ができるようにするため、「経営管理権、経営管理実施権の設定がポイントです。


経営管理権:森林所有者の委託を受けて、伐採等を実施するために市町村に設定される権利をいいます。

経営管理実施権:市町村の委託を受けて、伐採等を実施するために、民間事業者に設定される「経営管理権」に基づく権利をいいます。




「森林の現状と課題」(林野庁)から抜粋
「森林の現状と課題」(林野庁)から抜粋

【徒然やまとコラム】

【森林経営管理法の課題は?】

 森林経営は、植林(造林)から長い保育期間を通じて管理し、60年以上樹齢以降、伐採し、次世代の森づくりを計画する持続性が必要となります。伐採後の再造林など、森林を適正に管理できる担い手(委託した民間事業者)をどう確保確保するのがが課題です。

 農林水産省は、事業者の選定の考え方を盛り込んだ指針について、年内に示す方針です。


 森林経営管理法は、経営管理が適切に行われていない森林について、市町村が特定して、原則、森林所有者の同意が前提ですが、所有者不同意森林や所有者不明森林について、特例が規定されてます。

 具体的には、森林所有者が委託することに同意しない場合や、所有者が見つからない場合には、市町村の勧告(2ヵ月以内の同意を求める)、裁定(6月以内)申請・知事裁定によって、「同意みなし」となる「公告制度」を創設し、これにより、計画公告・権利設定(この特例適用は管理期間50年が上限)の規定されてます。


 例えば、相続した森林について、管理できない所有者が、山林にはヒノキ(S30年頃植林)が樹齢60年を超えており、60年の伐期が来たといわれても、私の森は100年育てたいとの想いがあれば、同意しない場合も想定されます。このような状況でも、同意なくても、所有権と管理権を分離して、伐採でできる条項は、森林所有者の権利の侵害にならないような措置が必要なところです。 

   また、全国各地の森林において、森林所有者に代わって、森林管理を適正にできる民間事業者が現れるのかなど、採算が見込める森林だけで、大半が市町村の管理となって、市町村の人材で、実効ある森林整備等できるのか、など課題は多い状況です。



森林環境税(仮称)の新設について

★ 2018年度の税制改革で「森林環境税(仮称)」が創設されることとなり、2024年度から住民税に1,000円が上乗せされることとになってます。「森林環境税」は、間伐や再造林などの森林整備等の森林吸収源対策の地方財源確保(市町村の管理費の財源)のために平成30年度税制改正で決まっております。(2024年度までの2019~2023年度は地方譲与税の配分)

★ 新税の税収は、年620億円に達する見込みです。各自治体に配分されるようですが、この財源が何よりも森林保全・森林整備の実効性を高めることにつながることを願ってます。