農業の大規模化が目指すものは、なに?


農業用ドローンによる農薬散布
農業用ドローンによる農薬散布

当事務所には、今年に入ってからも、農業に関するご相談が一段と増えております。

 

新規就農、農地所有適格法人の設立、農業経営支援、農業大規模化、農業関連の補助金・融資、スマート農業の導入、農業継承など、農業全般に関わる様々なご相談が全国から寄せられています。

 

当事務所は、北海道から九州までの地域農業に精通しており、強い独創性と意欲を持った農業生産者の新たな農業の取り組みについて、全面的にご支援させて頂いております。

 

その中から、ご相談の多い農業の大規模化・機械化に伴う「スマート農業」の導入について、その取り組みをご紹介します。

 

農林水産省において、「スマート農業」の構想が言われて15年ほど経ちましたが、現在では、中規模経営の農業生産者に導入・活用される段階に進んでいます。

 

構想当時は、耕うんロボットや田植機ロボットなどで、実用化が図られましたが、機能面やコストで、普及までには至りませんでした。

 

同時に、リモートセンシング技術を活用した初期型ドローンも登場し、上空からの病害虫防除への活用が始まったのもこの頃です。

 

今では、GPSによるドローンの普及により、施肥・防除の作業時間は90%以上削減できるほど省力化となり、ザルビオやアグリノート等の「ほ場管理システム」の活用により、画像データ・気象データ・土壌データ等による生育状況・土壌分析状況を把握でき、データ駆動型農業の推進に繋がっています。

 

現在の農業の現状は、高齢化・後継者不足による離農が加速化する一方、大規模生産者に農地の集約が進んでいます。

 

今や、生産効率・収益性の向上を目指す「新たな農業ビジネス」として、 意欲的な若年層の大規模生産者が全国の各地域にも広がりつつあります。

 

そこで注目されるのが、農業の大規模化・機械化と多様な複合農業化の組み合せによって、生産効率化進める取組です。

 


ハイクリブーム(乗用管理機:農薬散布)(BSA-651LDE-1_MARUYAMA)
ハイクリブーム(乗用管理機:農薬散布)(BSA-651LDE-1_MARUYAMA)
自動操舵システムナビ_NX510SE付(イセキトラクター)
自動操舵システムナビ_NX510SE付(イセキトラクター)


農業法人経営体の経営耕地面積で見ると、2020農業センサスでは、下図のとおり、規模が大きい層の経営体が多く、かつ、10ha~20ha、30ha~50haが増加傾向が顕著となっています。

 

これまでは、北海道においても、規模拡大の損益分岐点の目安は、40ha~50haといわれてきましたが、今では、ICT・ItoTの情報技術及びロボット技術を活用したスマート農業の導入により、農作業の自動化や効率化等による生産性の向上が実現できて、複数の県において、50ha超えて、100ha規模の農業経営体も出始めています。

 

こうした今までにない「広大、かつ、大規模農業経営」は、効率化・省力化の農業経営における管理能力が必須であり、これがなければ、営農活動を安定的・継続的に展開ができません。

 

この大規模・機械化・省力化の農業経営には、作付・栽培計画、出荷・販売計画はもちろんですが、機械費・資材費等の資金調達やスマート農業を推進する人材の確保など、綿密な生産実施計画の構築できるノウハウ等も必要となります。

 

この大規模農業の機械化は、生産活動にとどまらず、加工・流通・販売の過程にも進行するため、機械化に代替できる農作業は省力化されることになります。

 

スマート農業技術に対応できる人材の育成・創出や、農業機械では対応できない部門への雇用にシフトするなど、人的な作業内容も大きく変わってきます。

 

一方で、上記のスマート農業機械等の導入・拡大に向けては、多額な農業機械等の導入コストがネックとなることから、農作業等のアウトソーシングの促進に向けた「農業支援サービス事業」の育成・普及も欠かせないところです。

 

今後は、経営規模拡大において、この農業支援サービスを活用しつつ、効率化・機械化・省力化を目指し、更なる収益化につなげる農業者が確実に増えてきます。 

 


経営耕地規模別経営体数(法人)
経営耕地規模別経営体数(法人)


ブロッコリーの定植(マルチは「生分解性マルチ」)
ブロッコリーの定植(マルチは「生分解性マルチ」)

導入するスマート農業機械等は、稲作・畑作(ブロッコリー等)であれば、次の機械などが対象となります。

 

ほ場管理システム(アグリノート、ウォータセル、ザルビオ等)、ほ場水管理システム、GNSSアンテナ(基地局)、GPS搭載田植機、GPS搭載(自動操舵システム)トラクター、GPS可変施肥ナビキャスター、 GPS対応収量コンバイン(自動判別機能付)、農業等ドローン(農薬・肥料散布用)、野菜移植機(作物別)、乗用管理機(ハイクリブーム)、などがあります。

 

例えば、農薬散布であれば、動力噴霧器では300分/1haの労力を必要としていたところが、農業用ドローンを活用すれば、わずか12分/1haと、25分の1の短時間で作業が完了します。

 

この事例のとおり、スマート農業(気象・土壌・農作業等のデータ活用含む)の展開によって、大規模化・機械化・省力化が実現でき、これまでの生産過程における労力が大幅に軽減されることによって、ほ場条件が整っている地域であれば、今までの労力で、50~100ha規模の作付・栽培が実現できます。 

 

また、繁忙期(収穫時等)に必要な労力は、農業支援サービス(人材派遣型)からのサービスを活用することによって、労力コストの削減も実現します。既に、各地域での農業法人等では、特定技能1号の在留資格をもつ人材派遣の活用も、実績として行われています。

 

それでは、このスマート農業によって実現できる「大規模化・機械化・省力化による農業経営」が目指すものは、何でしょうか。

 

すでに、目指すものを実現に近づいている農業経営体も出始めていますが、スマート農業技術の普及によって、生産から流通・加工・販売・消費を含む「フードチェーン」全体で、その核を担う新たなビジネスモデルの構築が加速されています。

 

各分野のデータが連携され、生産の高度化、高品質の農産物の安定供給、各作業効率の向上などをもたらし、結果として、「スマートフードチェーン」の構築につながります。

 

スマート農業技術がより普及する過程においては、野菜についても、卸売市場を通じた現在の流通・物流システムも、省人・省力化に向けて、大きく変わっていくことが見込まれます。

 

現在、当事務所では、スマート農業技術の導入について、意欲的な若年層の農業者に対して、積極的な支援を行っており、ほ場条件が整えば、第一段階(3年以内)では、作付規模を水稲20ha、野菜10haを目指して、水稲では、生産費を9,000円/10aの達成を見込みます。

 

第2段階(5年以内)では、水稲50ha、野菜20haの規模を実現し、一年間通して生産から流通・販売までの体制を構築し、スマートフードチェーンの構築を目指していきます。

 

これからの規模拡大を検討される方は、従来型農業ではなく、この「新たな農業ビジネスモデル」を実現するために、確実に導いてくれるアドバイザーをサポートにつけて、果敢なチャレンジをされたら、いかがでしょうか。

 


【徒然のひとこと】 


スマート農業技術は、トラクター・田植機、農業用ドローン、コンバイン、野菜移植機などで、ぜひ体験してみてください。

 

導入費用が高額となりますので、導入に躊躇される方が少なくありませんが、当事務所は、融資支援・補助金申請まで、すべてサポートしております。

 

事例は、融資では、農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)(日本政策金融公庫)の融資実績など多数あり、補助金では、農林水産省の該当補助金等の支援実績もあります。

 

「スマート農業技術の導入」にあたっては、知見を有した者をアドバイザーにつけて取り組むことをお勧めします。

 

スマート農業機械の導入に関心のある方は、お気軽に、ご相談ください。