新たな農業ビジネスとは?



今、当事務所の農業版ホームページ「Yamato-Nou」からの農業関連のご照会が多く寄せられています。

 

ご照会の内容は、非農家で農業経験がない方から「農業を始めるための農地の取得」や「農業法人の設立」、「農作物の栽培管理」、「持続的農業の土づくり」、「有機栽培」、「JA・市場を依存しない販路開拓」、「農業支援の補助金」など、多項目のご相談に渡っております。

 

今までは、新規就農に関心のある方は、全国農業会議所や全国新規就農センター等が開催する「新・農業人フェア」や「マイナビ農業」等の農業情報イベントに参加し、各道府県の就農支援・農業体験などの情報で、行政サイドに誘導される取組が多かったところです。

 

コロナ後に、当事務所への農業相談は、今までの「就農」よりは、「農業をビジネス(仕事)とする」ことについて、強い意思を持たれている方が少なくありません。

 

農業を仕事にするキッカケは、農業にチャレンジしようとする思いが、人それぞれ異なりますが、食料が最も大切との想いは同じです。

 

毎日の食生活で「お米・野菜・果物・肉・牛乳・加工食品」に触れない方はいませんが、それらの農作物や加工食品がどこで(どこの国で)栽培されて、どういった経路をたどって、近くの店頭にならび、私たちの食卓に届くのかは、意外と知られていません。

 

また、原料(小麦や大豆など)の食材が農薬や化学肥料や食品添加剤など、どの程度、使用されているのか、どこの国で、どこの地域で栽培され、収穫はいつされたのかなど、私たちは何も知らないで、何の疑問ももたずに、価格だけを見て購入し、食べています。

 

店頭に並んでいる食料品は、本当に安全な食材なのでしょうか? 出荷段階の農業者は農作物の肥料・農薬等の使用実績はわかるでしょうが、加工された農産物に形を変えると、どの段階で何が使用されているのかは、食品表示で記してあっても、わからないのが実態では、ないでしょうか。

 

既に報道であったように、昨年からの輸入小麦や調味料の原料の値上げで、今年に入って、食料品・外食の価格が軒並み値上げラッシュとなっています。

 

例えば、食パン(山崎製パンが2022年1月から平均9%)の値上げ、釜玉うどん(丸亀製麵が2022年1月12日から約8%)の値上げ、しょうゆ(キッコーマンが2022年2月16日から4~10%)の値上げ、冷凍食品(テーブルマークが2022年3月1日から5~10%)の値上げ、牛丼並(すき家が2021年12月23日から約14%)の値上げなど、ほとんどすべての食料品の価格が高騰しています。今後も、値上げの背景が解消されていないことから、高騰が引き続くと見られてます。

 

➡ 高騰の背景は、下記のブログで、解説しています

 

  穀物価格-高騰-どうなる-私たちの食卓は/

 

小麦・大豆・トウモロコシなどの食料原料や、果樹・肉類など多くが海外からの輸入に依存しています。

 

食料品の価格高騰は、輸入に依存している限り、避けることはできません。輸入が止まれば、たちまち、食料危機となり、そこから農業を始めても、農業栽培技術がなければ、食料となる農作物は育ちません。


この状況からみると、農業から育て栽培する食料は、生きるためには、他の製品・サービスと比較できない、最も重要な取組であり、欠かせない位置付けとなります。

 

今、食料の大切さに気が付いて、すでに活躍している農業人を見て、新たに農業を始めるチャレンジ-として、「仕事として農業を選ぶ」方が少なくありません。 

 



「仕事として農業を選ぶ」、つまり、「新たな農業ビジネス」とは、何でしょうか 。

 

それは、「農と食の需給マッチング」であり、消費者ニーズに基づく安定生産と安定消費、それは、付加価値の高い農作物(食料)を持続的に生産・供給することです。

 

一つ目には、「見える化」というキーワードが10年前から言われてますが、ほ場の土づくりから、作物のは種・植付け・生育状況・出荷までの栽培地・栽培状況などの情報を「可視化」(QRコードでスマホにより確認)することによって、店頭で「生産者も栽培データも見える野菜」として、新たな付加価値を加えた「可視化した農作物」を消費者に提供するものです。

 

二つ目には、食料である農作物は、消費者のニーズに基づいた「土づくり・栽培・生産」であり、安全でなければならない、ただ、安くすれば売れるものではなく、安全性・品質・美味しさなど消費者のニーズに合った農作物でなければなりません。 

 

三つ目には、気象データや産地の生産状況などの需給予測から、購入者が安定的に購入できるように、供給の持続可能性を高めることが重要となります。

 

また、農業気象や土壌条件などにより、不作が見込まれる場合など、リスクを回避する栽培方法や栽培時期・栽培地の複数化などの対策も必要となります。

 

新たな農業ビジネスは、大規模な作付面積で生産量を増加させる耕種型農業ではなく、消費者ニーズに合った多種品目栽培で付加価値のある高品質の農作物の提供では、ないでしょうか。 

 



販路は、JA出荷や市場流通もありますが、消費者のニーズが直感でつかめるのは、ECサイトや直売所・マルシェの販売です。

 

お勧めは、専用のECサイトの立上げやYouTubeでの発信により、農園の積極的な広報に加えて、農作物の栽培状況の可視化や調理方法、利用者に声など、毎日、更新し続けると、6か月後には、消費者が求める農作物等であれば、成果がでてきます。

 

また、将来的には、農作物の高付加価値化や生産コストの低減など、産地の収益力強化などの取組が必要となりますので、生産性の高く、販売力のある農作物を盛り込んだ「農業経営計画」も実現できる内容とすることが求められます。

 

販売力の強化のためには、加工食品の販売も視野に入れての取組が必要となりますので、「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」や「野菜・施設園芸支援対策事業」・「食料産業・6次産業化交付金」などの補助金の申請も可能となるように、取組む必要があります。

 

新たな農業ビジネスは、食料危機が避けれない将来において、これから、消費者が求める方向であると言えます。

 


【徒然のひとこと】 

収穫前のブロッコリー
収穫前のブロッコリー
収穫したニンニク
収穫したニンニク

2022年から新規就農の支援「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」が大きく変わります。

 

現行の農業次世代人材投資資金(経営開始型)では、認定新規就農者が独立して3年までは年間150万円、4~5年は年間120万円の合計690万円が交付が、制度の見直しとなります。

 

主な変更点は、以下のとおりです。

・5年間で合計690万円から最大1,000万円まで増額

・使途が機械・施設への投資へ

・交付から無利子融資へ

(対象者は、見直し前と同様に、「認定新規就農者」です。)

 

なお、前年度の世帯所得が原則600万円未満の方は、1,000万円のうち一部を毎月の定額助成として、最大1ヵ月あたり13万円を最長3年間まで受け取れることも可能で、使途は限定されてません。

 

新規就農は、国や道府県等から、各種の支援がありますので、活用がお勧めです。

 

当事務所は、農地の取得や農地所有適格法人の設立、農業関連の補助金などもご支援させて頂いておりますので、ご相談ください。